交易条件 2010 12 5

書名 超マクロ展望 世界経済の真実
著者 水野 和夫  萱野 稔人  集英社新書

 今の世界経済を一言で言うと、
「金融危機」と「先進国総デフレ化」でしょうか。
 さて、この本では、先進国の不振を、
交易条件の悪化という視点から見ているのが印象的です。
 昔は、資源を安く買い叩き、付加価値の高い工業製品を売る。
それが、先進国のビジネスモデルだったと思います。
悪い言葉で言えば、「植民地経営」のようなものでしょう。
 しかし、資源ナショナリズムの影響で、
もはや資源を安く仕入れることは、不可能になったのです。
同時に、新興国の人たちが、欧米人のような生活を望むようになって、
さらに資源価格は高騰しました。
 こうして、先進国のビジネスモデルは通用しなくなったのです。
そこで、先進国は、どうしたのか。
新大陸を求めて行動したのです。
それが、金融立国という「新大陸」だったのです。
 しかし、リーマンショックという大地震により、
「新大陸」には、亀裂が走り、
金融立国を廃業せざるを得ない国が多数出現しました。
 そこで、先進国は、通貨安競争という古典的な兵器で、
工業製品を売るというビジネスモデルに戻ろうとしています。
 日本は、資源価格の高騰にもかかわらず、
金融帝国化することもなく、工業製品を売るビジネスモデルを続けていました。
省エネルギーと工業用ロボットで、資源価格の高騰を乗り切ったのです。
(その代わり、人件費は省エネルギー、いやリストラとなりました)
 しかし、あまりにも資源価格の高騰が続くので、
こうした手法が通じなくなってくるかもしれません。
他の先進国と同様に、日本の時代は終わるのか。
 ここでイメージしている資源価格とは、
石油、鉄鉱石、食糧、レアメタルなどです。
 しかし、石油に代わるエネルギーが主流となるかもしれません。
鉄に代わって、炭素繊維が主流となるかもしれません。
食糧は、工場で生産するようになるかもしれません。
レアメタルは都市鉱山を利用する、いや代用品が開発されるかもしれません。
 もちろん、こうしたことは、
日本が科学技術に力を入れるという前提条件があります。
 たった一つの発明でも、世界は激変する。
そして歴史が変わる。

100年デフレ 2009 5 10

書名 100年デフレ (文庫版)
著者 水野 和夫  日経ビジネス人文庫

 今回の未曾有の経済危機に際して、
多くの人が、歴史を振り返るために、
1929年まで遡っています。
 しかし、歴史を検証するならば、
1929年では不十分だと思います。
中世から現代までを検証する必要があると思います。
 「100年デフレ」と聞くと、
何だか、未曾有の経済環境がやってくるように思えますが、
この本にある図表によると、
100年デフレのようなものは、過去に数回あったのです。
 最近、先進国は低金利政策となっていますが、
こうした「超低金利」は、過去にもあったということ、
そして、このような「利子率革命」は、
体制移行期に起きていると指摘しています。
 現在、世界同時低金利と言われています。
これは、単に金融政策に留まらず、
「今、世界は体制移行期にある」と言えるかもしれません。
大げさに言えば、世界同時低金利が、
新文明到来を知らせる鐘の音となっているかもしれません。


















































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